ウェブプロダクト制作に関して平均的に能力がある

Marcoは1人でInstapaperを運用している[2]。マーケティング・デザイン・プログラミング・サーバー管理の全てを1人でやるというのは、相当大変だ。もちろんどれをとってもMarcoよりも優れている人はたくさんいる。ただ、Marcoのレベルで全て1人でできる人はほとんどいない。RPGでいえばMarcoは万能キャラだ。ナイトほどパワーはないが一応剣も使える。狩人ほど器用ではないが弓も装備できる。1番低レベルかもしれないが回復魔法も攻撃魔法も使えるというわけだ。

Marcoのような万能キャラは、起業にうってつけである。というのも、万能キャラは誰にも大きく依存せずにプロトタイプが作り、宣伝できるからだ。例をあげて説明しよう。例えば、あなたがデザイナーだったとして、「ああこういうウェブアプリがあったらいいな」と思いつく。でも、そのアイデアをプロダクトにするには、サーバーを借りて、DNSを設定し、データベースをコンパイルして、キャッシュサーバーを設置して、アプリケーションコードを書いて…と延々と技術的なハードルに出くわすことになる。もちろん誰かを雇うことは可能だが、その時点でこのプロジェクトは高くつくことになってしまう。

逆に、あなたがエンジニアだったとしよう。すると今度はプロダクトデザインで壁にぶちあたることになる。いろいろと違うインターフェースをデザインしてみるが、どうもしっくりこない。インターフェースがお粗末ではユーザーが集まらないので、デザイナーに頼んでモックアップをつくってもらうことになり、前の例と同じように人件費がかかってしまう。もしプログラムの知識もデザインの素養もなければ、さらに高くつくというのは、明らかだ。

仮にコードが書けてそれなりのプロダクトをデザインできても、まだまだ終わりではない。できたプロダクトを宣伝しなくては、誰にも使ってもらえない。いわゆるマーケティングをすることになるが、これがそうカンタンではない。エンジニアやデザイナーの中にはマーケティングを下に見る人がいるが、マーケティングなしではプロダクトを売ることはできない。顧客サポートやコピーライティングは、デザインやプログラミングと同じくらい、プロダクトの運命を握っている。

すでにおわかりかもしれないが、起業するうえでMarcoが圧倒的に有利なのは、上記のすべてが1人でできるので、初期段階でコストを大幅に抑えられ、さらに自分で全てコントロールできるということだ。デザイナーをせっつく必要もなければ、外注したプログラマーの遅々とした作業にやきもきすることもなく、広告業者にいちいちプロダクトを説明する必要もない。自分でデザインを決め、それをコードに落とし込み、宣伝用のブログ記事も自分で書く。Marco Armentはウェブの世界での究極のなんでも屋さんで、そんな彼がTumblrで働くかたわら始めたのがInstapaperだ。